【初心者さん向けイラスト上達法】「模写」って何?やった方がいいの?「模写」の疑問にお答えします。

イラスト練習法

「模写」って何?

「模写」にどんな効果があるの?

独学でイラストを練習したい初心者の皆さんに向けて、「模写」についての疑問にお答えできればと思います。

私も独学でイラストを勉強したので、自分の学びや経験が少しでもお役になてれば幸いです。

「模写」とは?

「模写」とはWikipedia(ウィキペディア)によると、下記のように説明してありました。

美術において、他者の作品を忠実に再現し、あるいはその作風を写しとることで、その作者の意図を体感・理解するための手段、方法。

Wikipedia

「忠実に再現」とか、「作者の意図を体感・理解する」とか何だか難しそうですね。

例えば、こんな感じです。

「模写」したい誰かのイラスト作品を手本として用意します。

その作品のそばに、作品を描き写すための紙を置きます。

手本の作品をよく観察しながら、なるべくそっくりに描いていきます。

このとき、作者がどのように作品を描いたのかを考えながら描き写していきます。

作者は線はどうやって引いてるんだろう?とか、

線は太いの?細いのか?とか、

線はつながっているの?ところどころ途切れてるの?とか、

線は柔らかいの?硬いの?とか、

構図はどうなってるの?とか、

作者のこだわりはどこだろう?とか、

顔のバランスってどうなってるの?とか、

眉、目、鼻、口などの顔の各パーツの顔全体における位置はどうなっているの?とか、

右目と左目の間隔はどれくらいなんだろう?とか、

人体の比率は?8等身?いや6、5頭身?とか、

シンプルに描いてると思ってたけど、こんなに細かいところまで描き込みしてたんだ!とか、

などなど。

模写によって、作者がこの作品をどういうふうに描いてるのか、いろんなことを知ることができます。

模写を始めたばかりの頃は、そっくりに描くことは難しく感じると思います。

描き写すときは、何度も消しゴムで消して修正しても大丈夫です。

修正して何度も描き直すことも練習になります。

どうして似ないんだろう?

どこが違うんだろう?

たとえそっくりに描けなくても、何度も修正することでまた新たな発見があるからです。

そっくりに描けなくて悔しい思いをしたり、時間のかかる練習方法だと思います。

だけど、模写をすると、作者の作品をただ眺めているだけでは気が付かなかった、あなたなりの発見、学びがきっとあると思います。

模写にどんな効果があるの?模写する意味、目的

イラストの効果的な練習方法として紹介される「模写」ですが、「模写」にはどのような効果があるのでしょうか?

「模写」する意味、目的として以下のことが考えれれます。

  1. 「見る目」が鍛えられ、物の形を取ることが上手くなる。
  2. 「気づき」により、技を盗む。

1、「見る目」が鍛えられ、形を取ることが上手くなる

「見る目」が鍛えられると、物の形をより正確に捉えることができるようになります。

ところで、学校でクロッキーやデッサンの時間はありましたか?

クロッキーだと、クラスメイトの子をモデルとして教室の中央に立たせて、他の生徒はその周りを囲み、3〜5分といった短い時間でスケッチブックにモデルを描き写していくのでした。

このとき、モデルそっくりに描くのはむずかしくありませんでしたか?

モデルの形や全体のバランスをうまく取ることはできましたか?

たとえば、頭を大きく描きすぎて、体のバランスがおかしくなったとか、逆に、頭を小さく描きすぎて、体を大きく描きすぎたとか。

体に対して腕が長すぎるとか。

腕に対して、手が小さい、あるいは大きすぎるとか。

目の位置や鼻の位置がおかしい、ゆがんでいるように見えるとか。

これは、目で見た物の形を正確にとらえる「見る目」が養われていないことによるものです。

「模写」を続けていくと、「見る目」が鍛えられ、対象物やモデルなどの物の形をより正確に描き写すことができるようになります。

対象物やモデルの形をより正確に描き写すことができるようになれば、自分の作品の中でも人物はちゃんと人物らしく、車はちゃんと車らしく、ビルはビルらしく見えるように描けるようになります。

2、「気づき」により、技を盗む。

先ほどお話ししたように、「模写」をすると、作者の作品をただ眺めているだけでは気が付かなかった、あなたなりの発見、学びがあるとお話ししました。

作者の線って、こんな特徴があるのか!

この構図、面白い!

このキャラクターの髪型ってこんなふうに描いてるんだ!

この指先の描き方、色っぽい!こんな細かいところも意識して描いてるんだ!

など、作者がどのように考えてこの作品を描いたのかと考えながら描き写すことで、いろんなことに気がつくようになります。

この「気づき」が重要です。

気づきにより、それを理解して自分のものとして取り込むことができるからです。

弟子が師匠の技術を吸収し身につけていくことを、「技を盗む」と表現されることがあります。

憧れの作家さんや作品を師匠としていろんな技を盗んでいけば、あなたの絵を描く技術も着実に上達していくと思います。

「トレース」とどう違うの?

「模写」と混同され、間違えられる方法として「トレース」というものがあります。

「トレース」とは、

すでにある物をなぞること。

Wikipedia

つまり、トレースとは、すでに誰かが描いた漫画やイラストなどを、なぞって写しとることをいいます。

例えば、ここに誰かのイラストがあったとします。

そのイラストの上に、トレーシングペーパーのように、下のイラストが透けて見えるくらいの薄い紙を置きます。

透けたイラストを薄い紙の上から鉛筆などでなぞります。

そうすると、なぞった薄い紙の上に下のイラストの線画が転写されることになります。

「トレース」は手本の上をなぞるだけで、手本とそっくりの線画を簡単に描くことができます。

「トレース」も「模写」と同じような効果が得られるの?

上からなぞるだけで、手本とそっくりに描き写すことができる「トレース」。

もし「トレース」で「模写」と同じ効果が得られるのなら、楽な練習方法を選びたくなりますよね。

先ほど、「模写」には次のような効果があると述べました。

  1. 「見る目」が鍛えられ、形を取ることが上手くなる。
  2. 「気づき」により、技を盗む。

結論から言うと、「トレース」では、「気づき」により技を盗むということはある程度できると思いますが、「見る目」は鍛えれらいため、物の形を取る力は身につきにくいと思います。

例えば、キャラクターの髪の凹凸やギザギザの描き方とか、キャラクターの顔の輪郭線の強弱などを理解する、といったことは「トレース」で学ぶことはできます。

しかし、「トレース」だと、顔の輪郭や体などの線や点の位置関係や大きさなどを目で見て確かめながら描くことはしないので、「見る目」を鍛える練習にはならないからです。

つまり、「トレース」は、作者がどういうふうに描いてるのか簡単に知ることはできますが、絵を描いていく上で重要な形を正確に捉えて描く能力は上達できない、ということになるのです。

今、自分は何を学びたいか、何を練習したいのかをよく考えて、「トレース」がいいのか、「模写」がいいのかを選ぶといいと思います。

ただ、まだ「見る目」が鍛えられていない初心者さんには、楽な練習方法ではないですが「模写」をお勧めしたいです。

「模写」すると個性がなくなるのでは?

模写をすると、真似することになるから個性がなくなるのではないかと心配する方がいらっしゃいます。

大丈夫です!個性はなくなりません。

むしろ、自分の個性を知るため、個性を作るために模写をするのです。

たとえば、誰かに自分では気づかなかった自分の好きなこと、得意なこと、癖などを指摘されて、ハッと驚いた経験はありますか?

自分自身のことは自分ではなかなか見えないものです。

模写をすることで、自分の好きなこと、得意なこと、癖など、自分自身を知ることができます。

たとえば、模写するために選んだイラストのどこが好きなのかを考えてみます。

特にこの作品の目の描き方が好きなら、自分はキャラクターの目にこだわりがあると知るとか、

アクションシーンが好きなら、アクションを描くのが好きなんだと知ることができます。

いろんな作品を模写することで、自分の好きな部分やこだわりがどんどん蓄積されていきます。

その蓄積が、あなたの個性を作っていくのです。

また、何度修正しても自分の手ぐせみたいなものが出てしまうので、完全に手本に似せることはできません。

その手ぐせも、実はあなたの個性なのです。

何が好きなのか、何にこだわりがあるのか、どんな癖があるのか。

たくさん模写して、自分の個性をどんどん作っていってください。

何を「模写」すればいいの?

初心者の方は、大好きなイラスト作品、漫画・アニメのキャラクターなどを「模写」するといいと思います。

自分もこんなふうに描いてみたい!イラストを練習して上達したい!と思ったということは、その気持ちを起こさせた作品があると思います。

ほとんどの方は大好きなキャラクターを描いたみたい!と思ったことが多いと思います。

そこで、まずキャラクターの顔がアップになった漫画の一コマやイラストなどを手本として用意します。

キャラクターの全身が描かれたイラストは、手や胴体、脚など描く部分が多いので、それらの描き方をまだよくわからない初心者の方には難しいからです。

キャラクターの練習なので背景も写さなくて大丈夫です。

模写する作品が小さくて見づらかったら、プリンターで拡大コピーするなどしてください。

ただ、あまり手本のサイズを大きくしすぎると、手本と同サイズでバランスよく描き写すことがむづかしくなります。

自分が模写しやすいサイズでになるように工夫して手本をコピーしてみてください。

プロの方が、十字の補助線を入れているのを見たことがありますか?

特に十字の形にこだわる必要はありません。

眉の位置や左右の目の間隔など、模写しやすいようにいろんな補助線を引いて工夫してみてください。

パソコンのお絵描きソフトで「模写」してもいいの?

紙と鉛筆(もちろんシャーペンでもOK)での模写をお勧めします。

パソコンのお絵描きソフトの機能やペンタブには慣れが必要ですが、紙と鉛筆ならすぐに模写の練習ができます。

また、パソコンではアンドゥ/リドゥ機能で何度も描き直しができますが、消しゴムで消したところはまた描き直さなければならないので、何度も描き直すことも練習になります。

模写する意味・効果として、「見る目」を鍛えて形をとることが上手くなる、とお話ししました。

手本と自分の写しの全体を自分の目で把握できる範囲に収めた方が、手本と自分の写しを比較しながら描けるので描きやすいです。

楽しくお絵描きするときはパソコンでいいですが、模写は紙と鉛筆を使って練習してみてください。

紙と鉛筆でで描けるようになれば、パソコンでも描けるようになります。

「模写」で学んだことを生かすには

模写するだけでも、いろんなことに気づくことはできますが、そこで終わってしまうと、知識として知っただけに留まってしまいます。

模写で得た知識を使えるようにするには、実際にその知識を使って描いてみるのが一番です。

すぐにアウトプットすることで、知識が定着しやすくなります。

例えば、英単語の勉強でも知識として知っているだけではその単語を全然使えませんよね。

英作文や英会話などでアウトプットして初めて使えるようになります。

絵の上達もそれと同じで、学んだ知識を使って描くことで、使える技術になっていきます。

アウトプットの方法としては、次のような方法があります。

手本を見ないで描いてみる

模写したあとに、手本と自分で模写して描いた写しも見ないで、手本を思い出しながら描くという方法があります。

全くヒントなしで、手本を思い出しながら描くということです。

まず、模写に使用した紙とは別の用紙を用意します。

手本と自分で模写して描いた写しを見ないようにして、別に用意した紙に手本を思い出しながら手本を再現するように描いていきます。

途中で手が止まったら、手本を見てもOKです。

手本を見たら、また手本を隠して描きます。

これを繰り返すことで、手本で学んだことが身につき、自分の描き方として表現できるようになります。

手本を真似て自分の作品を描く

模写した後、模写で気がついてことや学んだ知識を使って、自分の作品を描いてみましょう。

自分の作品といっても、大きな作品を完成させないといけないわけではなく、落書きでもいいです。

斜めから見たキャラクターの顔の描き方を模写で学んだら、とにかく真似でもいいから自分のキャラクターを作って描いてみましょう。

初心者のうちは、まだ描き方もよくわからないのですから、オリジナリティーを出そうと考えると描くことが難しくなってしまいます。

「学ぶ」(まなぶ)の語源が、「まねぶ」(学ぶ)であり、「真似ぶ」(まねぶ)も同じ語源あるという説があるようです。

学びは真似ることから始まります。

「模写」しても上達しないんだけど?

たくさん「模写」をしても上達した気がしないのは、もしかしたら「模写」のやり方に原因があるかもしれません。

できるだけ手本に似せるように模写しているか

手本を見ながら描いていても、できるだけ似せようとして描かないと、作者の描き方を自分のものにすることはできません。

先ほども述べたように、学びは真似から始まります。

手本をよく観察して、できるだけ手本に似せるように頑張って描きましょう。

意識しながら「模写」をしているか?

何も考えずに手本を見ながら写しても、残念ながら模写の効果は得られません。

「模写」する意味、目的の一つは、作品から気づきを得て技を盗むことだとお話ししました。

自分はこの作品から何を学びたいのかを明確に意識して模写をしましょう。

このとき、学ぶことをひとつに限定します。

例えば、今日の模写は、作者の目の描き方について学ぶぞ!と意識して、目というパーツに限定して模写したり、顔の輪郭の描き方を学ぶぞ!と輪郭に限定して模写したりします。

どうして一つに絞った方がいいのかというと、初心者のうちは、まだ上手くできないことばかりなので、一度にたくさんのことをやろうとすると、学ぶことの多さに圧倒されてしまい集中して学べないからです。

今日はキャラクターの顔の輪郭を学び、次は目の位置を知るといった具合に、できることを少しずつ増やして行った方が遠回りのようですが、着実に身につくと思います。

1回の模写にどれくらいの時間をかけているか?

早く描いて模写した気になっていませんか?

手本にするイラストにもよりますが、手本をじっくりと観察しながら描くとすると、初心者の方なら10分以上はかかると思います。

プロの方はササっと作品を仕上げているように思えるかもしれませんが、実際は一つの作品を仕上げるの全体のバランスや細かいところを修正したりしてるので時間がかかっています。

ただ、ここで誤解しないでいただきたいのは、時間をかければよいというわけではないということです。

素早く描くことが目的なのではなく、作品に食らいつき、技を盗んでやるぞ!とう気持ちで、じっくり観察しながら、できるだけ似せるように取り組む姿勢が大切だと思います。

アウトプットしているか?

『「模写」で学んだことを活かすには』の項目でお話ししたように、模写しただけで終わってしまうと、ただ知識を入れただけで留まってしまいます。

覚えた知識を使っていかないと、身につかないままどんどん忘れていってしまいます。

ラクガキでもいいので、とにかく学んだ知識をすぐにアウトプットしてください。

まとめ

模写は、地味でとても負荷のかかる練習方法だと思います。

模写を始めたばかりの初心者の方にとっては、手本そっくりに描けずに悔しくて諦めたくなることもあるかもしれません。

だけど、続けていくと前より上達していく自分に気がつくはずです。

何かを身につけるには時間がかかります。

誰でも初めは初心者です。

初めはできなくて当然です。

すぐにできなくても、どうか焦らずにコツコツと練習していきましょう。

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