お気に入りのイラストを模写をしても、手本に似せて描くことができない!
どうすれば手本そっくりに模写することができるの?
今回は手本そっくりに模写する方法について、お話ししたいと思います。
手本そっくりに描く方法
手本そっくりに描く方法には次の方法があります。
- 棒状のもの(鉛筆や定規など)で比率を測る方法
- グリッド(スケール)を使う方法
まず、これらの方法をデッサンで行う場合を説明した後に、これらの方法を模写に応用するやり方ついてお話ししたいと思います。
棒状のもの(鉛筆や定規など)で比率を測る方法とは
絵描きがデッサンをする時にやっているポーズを見たことがありますか?
鉛筆の側面に親指を当てて持ち、デッサンしたい対象物の方に腕を伸ばして、鉛筆を横にしたり斜めにしたり動かしたりしている、あのポーズです。
あのポーズは何をしているのかというと、鉛筆と親指の先を基準にして、対象物の長さや傾きなどを測っているんです。
下の絵は、絵描が対象物を鉛筆で測っているときの、絵描きの視点で見た見え方を描いたものです。
例えば、ここではボトルの口からネックまでの長さを基準にするとします。
目で見てボトルの口からネックまでの長さに合うように、鉛筆の頭と親指の先の長さを合わせます。
その長さを基準にして、ボトルの高さを測ります。
今の例だと、ボトルの底はどら焼きで隠れているので、ボトルの高さはボトルの口からどら焼きで隠れていない範囲で測ることになります。
ボトルの高さは鉛筆の長さ4つと鉛筆の長さの5分の1であることがわかります。
デッサン用紙に描く絵全体がうまくおさまるように、描く範囲を決めます。
ボトルは左右対称なので、ボトルの中心を縦に通る中心線を引くと描きやすいです。
ボトルの右半分を測れば、中心線を軸として左半分も対称的に描けるからです。
先ほど鉛筆で測った比率をもとに、ボトルを描くための目安となる線、アタリ線を描いていきます。
絵全体がデッサン用紙にバランス良くうまく収まるように、ボトルの口からネックまでの長さを決めたら、その長さを1として、その長さ4つと5分の1のところに目印を描きます。
ここでポイントとなるのは、鉛筆の先から親指の先までの実際の長さで描くのではなく、「比率」を使うという点です。
なぜ「比率」を使うのかというと、デッサン用紙にはいろんな大きさの紙があるので、鉛筆の先から親指の先までの実際の長さで描くと、大きすぎて用紙からはみ出たり、あるいは用紙に対して小さすぎたりと、バランスの悪い絵になったりするからです。
比率を基にすれば、用紙に合わせて描く絵の大きさを適当な大きさに拡大して描いたり、縮小して描いたり、調節して描くことができます。
次は、ボトルの幅を測ってみます。
このとき、ボトルの幅を新たに測り直すのではなく、先ほど測ったボトルの口からネックまでの長さを基準にして、ボトルの幅を測ります。
つまり、基準となる長さは変更しないということです。
ボトルは左右対称なので、中心線からボトルの側面まで測れば、反対側も同じように描くことができます。
ボトルの右側の幅は、ボトルの口からネックまでを基準にした鉛筆の長さの3分の2であることわかります。
同様に測って、ボトルの口の幅は3分の1より少し短いことがわかります。
この比率を基に、デッサン用紙にアタリ線を描きます。
アタリ線を基にして描くと、ボトルの形をできる限り正確に描くことができます。
ここの例で挙げた図の中の、りんごやどら焼きをデッサンする場合も、鉛筆で測ったボトルの口からネックまでの長さを基準として、ボトルからの位置や大きさを測ることによって、より正確に描くことができます。
グリッド(デッサンスケール)を使う方法とは
デッサンスケールとは
デッサンスケールという薄い板状のデッサン用の道具があります。
一般的に販売されているデッサンスケールはプラスチックの薄い板でできています。
黒枠の内側は透明で16分割されたグリッド状になっています。
デッサンスケールは、デッサンする対象物の構図を決めたり、対象物の形を正確に写し取るために使われます。
デッサンスケールの使い方
対象物と自分の目を結ぶ視線と垂直になるようにデッサンスケールを持ちます。
構図を意識しながら対象物をデッサンスケールの枠内におさめます。
次に、デッサン用紙にグリッドを描きます。
デッサンスケールは小さいので、デッサン用紙に大きく描きたいときは、デッサンスケールのグリッドの幅と高さを定規で測って、グリッド幅と高さの比率を維持したたまま、幅と高さを拡大します。
例えば、A4(横幅210mm、高さ297mm)のデッサン用紙からはみ出さないように描くために、拡大したグリッドの横幅を135mmと決めたとすると、拡大したグリッドの高さは195mmとなります。
スケッチブックに、横幅135mm高さ195mmのグリッド枠を描き、それぞれ4分割したらグリッドの完成です。
スケッチブックにグリッドが描けたら、デッサンスケールのグリッドとスケッチブックに描いたグリッドを目安に対象物を写していきます。
初めは、グリッドと対象物の輪郭線が交差したところに印をつけていくような感じで、全体のバランスを大まかに描き写します。
大まかなバランスが決まったら、グリッド上の印を線でつないでデッサンを完成させていきます。
デッサンでの方法を模写に応用したやり方
ここまで、対象物をデッサンするときに形を正確に写し取る方法をお話ししてきました。
ここからは、デッサンの方法をイラストの模写に応用する方法を説明していきます。
棒状のもの(鉛筆や定規など)で比率を測る方法
模写するイラストとスケッチブックなど描き写す紙を用意します。
例えば、キャラクターの顔の正面を模写するとします。
まず、基準となる線を決めます。
模写したいイラストに、頭のてっぺんから顎まで直線を引き、この線を基準の線にするとします。
まず、眉の位置から調べてみましょう。
眉の位置に線を引きます。
頭のてっぺんから顎までの基準となる直線に対して、顔のパーツがどの位置に配置されているのかを、デッサンのように鉛筆や定規をあてて測ります。
このイラストだと、眉の位置は基準線に対して2分の1の位置に配置されているのがわかります。
同様にして、目、鼻、口の位置にも線を引いてみます。
鼻の位置は、基準の線の4分の1、または眉と顎の2分の1のところに位置していることがわかります。
口は、鼻と顎の3分の1に位置していました。
目の下の位置は、眉と鼻の2分の1よりもほんの少し下に位置しています。
目の上の線は、眉と目の下の線との3分の1くらいに位置しているようです。
顔の各パーツは調べたので、次は輪郭を調べていきます。
眉あたりの顔の横幅を、頭のてっぺんから顎までの長さと比較してみます。
頭のてっぺんから顎までの長さの2分の1よりほんの少しだけ長いことがわかります。
顔の輪郭を観察すると、楕円形ではなくて角張っています。
下の図の緑色の丸で囲まれた、顎の近くで輪郭の角度が変化する位置を調べてみます。
顔の横幅の3分の1、口の位置よりも少し下なのがわかります。
次は耳についてみていきましょう。
耳は目の上まぶたから鼻の少し下までに位置していて、耳の幅は顔の横幅のほぼ3分の1であることがわかります。
ここまで顔の各パーツと輪郭についてだけ説明しましたが、頭部など他の部分も同じように、模写する上でポイントとなるところに補助線を引いて基準線に対しての比率を調べていきます。
模写したいイラストの比率を調べたら、その比率をもとにしてスケッチブックに写していきます。
まず、キャラクターの顔を模写する位置に、基準線を引きます。
ここでの例だと、基準線は頭のてっぺんと顎を通る直線なので、頭のてっぺんと顎を通る直線を引き、頭のてっぺんと顎の位置に印をつけます。
眉の位置に線を引きます。
眉は基準線に対して2分の1に位置していたので、頭のてっぺんと顎の2分の1のところに、基準線と垂直に交わる線を引きます。
同様にして、目と鼻と口の位置にも線を引いていきます。
次は輪郭を描いていきます。
眉あたりの顔の横幅のところに印を入れます。
顎の近くで輪郭の角度が変化するいちに印をつけます。
耳の位置と耳の幅の位置に印をつけます。
これまで引いてきた線を目安に、まず輪郭を描いてみます。
この時、目安となる比率の線だけではなく、ネガティブスペースの形も意識します。
ネガティブスペースは下のような、重要な要素が何もない余白のスペースをいいます。
同じように、比率で引いた線とネガティブスペースも意識しながら、耳を模写します。
大まかに輪郭が取れたら、顔の各パーツを描いていきます。
鼻と口が描きやすいので、鼻と口の位置にそれぞれ描いてみましょう。
次は眉を描いてみましょう。
模写するイラストを観察すると、眉の長さは下の図のように見えました。
眉を描きました。
次は模写するイラストを見て、目を観察してみましょう。
これまでと同様に、鉛筆などをあてながら比率を探っていきます。
同様にして、頭部や髪も描いてみましょう。
今の例ではとりあえず、左半分だけ描きました。
正面の絵と言っても、完璧に左右対称になっているとは限らないので、右半分を描くときも左側を鉛筆などで測ったやり方と同じ方法で右半分を測って描きます。
このようにして顔全体を測り模写します。
模写し終わったら、今度は今測った比率を用いて手本を見ないでキャラクターの正面を描きます。
比率を覚えると、手本を見なくてもキャラクターの顔をいつでも描けるようになります。
グリッドを使う方法
次はグリッドで模写する場合を説明します。
模写するイラストを用意します。
まず、模写したいイラスト全体を長方形で囲みます。
長方形を分割して、グリッドを作ります。
グリッドの縦と横を定規で測って、比率を調べます。
今回は約1対1でした。
スケッチブックなどの描き写す用紙に、描き写す大きさを考えながら先ほど測ったグリッドと同じ比率のグリッドを描きます。
グリッドの線とイラストの線が交差したところに印をつけていくような感じで、模写していきます。
描き初めは交差したところをいきなり直線で結ぼうとせずに、まずは印をつけて後で線でつなぐようにします。
グリッドの線と交差してないところは、次のようにします。
例えば、顎の線が変化するところの位置に印をつけたいとします。
このとき、顎の線が変化する変化点が位置するグリッドの縦線と横線に薄く印をつけます。
そこから垂直線を伸ばします。
2本の垂直線が交わる点が変化点になります。
そこに印をつけます。
線をつなげるときは、ネガティブスペースも意識しながら印を結んでいきます。
このように、グリットとイラストの線が交差するところに印をつけたり、グリッドの横線と縦線の位置から伸ばした垂直線が交わるところに印をつけたり、ネガティブスペースなどを使って仕上げていきます。
どちらの方法が良い?
グリッド法もいいですが、模写の練習には棒状のもの(鉛筆や定規など)で比率を測る方法をお勧めします。
グリッド法だと、模写するイラストの線とグリッドの線が交わったところをただ写していく作業になりがちですが、棒状のもので比率を測る方法は自分の目で見て測りながら描いていくからです。
また、比率を測って覚えると何も見ないでキャラクターを描けるようになります。
そっくりに描く方法をやる意味
棒で測ったりグリッドを使ったりして、どうしてこのようなめんどくさい方法をしないといけないのでしょうか。
それは、人の目は見ているようでいて実際はよく見ていないからです。
人間の目が曖昧な一つの例として、錯覚というものがあります。
矢印が内側を向いている直線より、外側を向いている直線の方が長く見えますが、実際はどちらの直線も同じ長さです。
だから、模写の対象を観察して正確に写し取るためには、長さや大きさ角度を測るために何かしらの基準が必要になってきます。
絵を描き始めたばかりの頃はまだ物を見る目、観察する力が養われていません。
曖昧な目だけに頼るのではなく、棒やグリッドを使うことによって観察する力を強化できるのです。
まとめ
正確に写し取る方法として、棒状のもの(鉛筆や定規など)で比率を測る方法とグリッド(スケール)を使う方法をお話ししました。
特に棒状のもの(鉛筆や定規など)で比率を測る方法はめんどくさいですが、続けていくと観察する力がアップするだけでなく、比率を覚えれば手本を見なくてもキャラクターが描けるようになります。
参考になれば嬉しいです。